医療法人尽誠会 山近記念総合病院・山近記念クリニック

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子宮動脈塞栓術(UAE)

子宮動脈塞栓術(UAE)とは

子宮動脈塞栓術(UAE)は、多量の月経時の出血やこれによる貧血、疼痛、腫瘤による圧迫症状など、有症状の子宮筋腫・子宮腺筋症に対して行う、子宮全摘術や筋腫核出術に代わる新しい治療法です。
UAEは血管造影の技術を用い、血管内治療をする放射線科の一部門、IVR(Interventional Radiology)医によって1995年フランスで始まり、これまでに全世界で200,000例以上の治療が行われています。特にアメリカでは、1996年の開始以来、ボストン、フィラデルフィア、ロサンゼルスを中心にUAEセンターが設置され、年間10,000例以上の治療が行われています。その低侵襲性・低コスト・高い治療効果から、今後も手術に変わる治療法として益々発展していくものと思われます。

子宮動脈UAE終了後
子宮動脈UAE終了後
  1. 子宮筋腫に対するUAEの長期的治療成績の報告では、5年経過での症状改善率は73~89.5%であり、UAE後5年経過し、再塞栓術を含む婦人科手術(子宮全摘術、筋腫核出術)を必要とした率は10.5~20%と報告されています。
    また他の治療法である子宮全摘術や筋腫核出術との比較では、3つの前方視的無作為臨床試験の報告があり、手術と同等の臨床効果が得られ、また入院期間・回復期間が有意にUAEのほうが短いことが証明されております。
  2. 子宮腺筋症に対するUAEの報告では、初期治療効果は良いものの中長期的には再発率が30~44%で、子宮全摘術移行率が10~28%あるとされております。
  3. 妊娠・出産希望者に対するUAEは欧米の放射線学会(SIR,CIRSE)、アメリカの産婦人科学会(ACOG)、カナダの産婦人科学会(SOGC)、放射線学会(CAR,CIRA)から発表された指針によると卵巣や子宮内膜に与える影響から原則として適応外とされております。

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手術

適応

閉経前の有症状子宮筋腫または子宮腺筋症で過去に内科的治療、ホルモン治療、または筋腫核出術までの外科治療を受けたことのある患者様で、現在次ぎのうちいずれかの症状を有する方。

  1. 多量の月経時出血とこれによる貧血症状、または月経時の痛み。
  2. 慢性の骨盤部、背中または下肢の痛み。
  3. 膀胱または他の尿路系の圧迫による症状(尿がちかいなど)。

ただし、将来妊娠を希望される患者様に対しては、UAE後の子宮内膜の萎縮や癒着、長期にわたるムコイド帯下の問題があり、原則適応外です。
現在ホルモン治療(スプレキュワ、リュープリンなど)を受けている患者様に対しては、治療を中止し3ヵ月後にUAEを行うことが望ましいでしょう。

副作用及び合併症

初期の副作用として、UAE直後から数時間続く阻血による骨盤痛がありますが、私達はこれに対し術前より持続硬膜外麻酔を併用しており、非常に有効です。また、鈍痛と時々発熱があることがあり、これはいわゆる塞栓後症候群として他疾患での血管塞栓術にもよくみられる症状(20%)であり、ながくても1週間ほどで軽快します。 UAE後2~4日目に退院となり、社会復帰まではUAE後1週間あれば十分と考えられております。これは子宮全摘術や筋腫核出術の1~1ヵ月半に比較して非常に早い回復力といえます。
また、欧米からの報告上、UAE後合併症として0,38%に子宮阻血、または壊死による二次性感染症(子宮内膜炎)により子宮全摘術が必要になることがあるといわれていますが、当施設で感染の為に子宮全摘術に移行した方は1337例中4例(0.3%)であり、感染をおこした場合でも子宮鏡を使った治療で完治し(51例,4,2%)、子宮全摘術をしないですんでおります。
別の合併症として卵巣機能低下による無月経が4~7%認められると言われていますが、私達の経験では、UAE後の卵巣機能不全は37例(2.9%)で、1例を除き全例が45歳以上の方でありました。

MEDICAL TORCH Vol.2 No.2 2006 (通巻3号)2006年4月30日発行

成績

私達は1998年より、UAEを有症状の子宮筋腫及び子宮腺筋症に対していち早く導入し、2010年12月現在1,337例(子宮筋腫1114例、子宮腺筋症223例)の実績があり、患者様からご満足をいただいております。
子宮筋腫の長期的症状改善率は95%であり、再発により婦人科手術を必要とした率は子宮全摘術12例、筋腫核出術13例の合計25例で筋腫UAE全体の2.2%に過ぎません。
また子宮腺筋症は血管構築の違いから筋腫に比較すると梗塞率が悪く再発率も高いのですが、私達は早い時期より塞栓物質のサイズをより細かくしっかり塞栓する事により、最近では完全梗塞率86%(筋腫91%)と、筋腫に対するUAEと同等の治療効果が得られるようになりました。長期的に見ても再発率は15%であり、再発または症状の十分な改善が得られず婦人科手術を必要とした率は、子宮全摘術8例、腺筋症核出術1例の合計9例で腺筋症UAE全体の4%に過ぎません。 以上より、長期的治療成績からもUAEの症状改善率は高く、子宮全摘術が必要となった方は感染、再発をあわせても24例(1.8%)に過ぎず、UAEは子宮全摘術に代わる治療として確立された治療法であると考えられます。

結論

現在日本では、子宮筋腫、子宮腺筋症に対して子宮全摘術、筋腫核出術を含めた婦人科手術は年間5万例施行されていると言われていますが、閉経まで症状を我慢して内科的治療、ホルモン療法を受けている患者様も多くいらっしゃいます。ホルモン療法の限界や副作用によりやむなく子宮全摘術や筋腫核出術といった外科的治療を勧められている患者様や、筋腫核出術後の筋腫再成長の症状に困っておられる患者様(原則挙児希望のない方)に対してUAEは手術に比べ、回復力の早い安全性の高い治療法であると言えます。